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黒の組織の天才医師()

第5章 スペア



「ジンったら、今日はキスをして来たよ」

テレビで見たから知ってるんだ。
そう愛紗は続けた。
ジンはいつものように終わればさっさと部屋から出て行ってしまった。
後日、何かしにくるのだろう。

愛紗はいつもとは異なり風呂には入らず、ベッドの上で呆けていた。

「あれは恋人同士でするものなんでしょ?なんでしたんだろう?」

まるで理解できない。
愛紗は性知識があまりなかった。
生殖行為としてのセックスは知っていも、自分がジンからされているものがそれだとは思っていない。
痛みがあるために、何かしらのお仕置きだという認識だ。

だからキスという行為をされた意味が分からない。
ジンにしてみれば、キスなどただのセックスの一環に過ぎないが、愛紗は違う。
初めてのキスがあっさり終わってしまって戸惑っているのだ。

自分では分からないから、自分よりも大人の世話役に尋ねるが答えは帰ってこない。
当然だ。
彼は声が出せないのだから。

本当に返ってくるのを期待した訳では無く、こう独り言を言って落ち着こうとしているのだ。

だってファーストキスは大事なものだってテレビで見た。

甘酸っぱい恋物語を不相応にも愛紗だって想像していた。
それまで、そういう対象がいなかったにもかからず。
自分でも出来ると思っている。

「ねえ、貴方はキスした事ある?」

これは首を振れば答えられる簡単な質問だった。
愛紗が世話役にこういった話を振るのは始めてだ。
世話役によって俗物的な知識が入ってしまったせいなのかもしれない。

愛紗の質問に答えず、世話役はベッドに近づいてくる。
座っている愛紗を抱きあげて風呂へと向かった。

「大人はずるい~」

ドラマで見たようにはぐらかされているのだと愛紗は思って、そのまま口に出した。
彼の人生を半分くらい奪っておいて酷い事を言って、怒らせたのかもしれない。

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