第4章 可哀想な子供
それは無くはない事だ。
知っている。
愛紗の事は良く。
だからこそ不思議だった。
愛紗は知っている組織の人間が死ねば悲しむ。
自分の姉が死んだ時もそうだった。
けれど、彼女は妙にさっぱりした所があって、葬式が終われば引きずる事をしないのだ。
神の元へ行ったと思っているのかと思っていた。
しかし弔いの為に東都タワーに訪れたという事なら、そうでは無いのかもしれない。
性格的にアイリッシュの葬式には参加したはずだ。
失敗した人間に組織は厳しい。
誰も望むものがいなければ葬式も無しに処理されたはずだ。
愛紗は希望を出したはず。
突発的な手術でも入って参加できなかったのだとでも?
いえ、愛紗の他に出ようとする人間はいない。
ならそんな事態になったら延期になるだろう。
組織は愛紗に甘い所がある、それくらいの融通はするだろう。
だとすれば……。
「何か心の変化があったようね。もうかつての彼女では無いのかもしれない。だとすれば危険だわ」
「危険って。そんな雰囲気は……」
「馬鹿ね。もう私の知る彼女じゃないのよ」
志保は確信があった。
何か大きく変化するような事件があったのだと。
それをさせたのは、一体誰?