第3章 おでかけ
抱き上げた腕は振るえていた。
何故自分は止める事が出来ないのか。
そうさせたのは愛紗であり、別に助けも求めていないのだから気にする必要は無いと言えたが、人の機敏に疎いために気付かない。
愛紗は他の構成員とは異なり、格闘技術は無いに等しい。
必須ともされる銃の扱いも出来ないくらいだ。
守るのは自分の役目だ。
世話役の中では、愛紗の痛みに同情する強い気持ちがある。
庇護対象が傷ついてると、自分自身も強い頭痛に襲われるのだ。
「お風呂入りたいな、それで今日は寝る」
疲れたと声を漏らす。
急いでいれた風呂に、愛紗を連れて行く。
リノリウムの固い床の上で行われたせいか、愛紗の白い肌は擦れて赤くなってしまっていた。
染みるかもしれない、そんな風に思い世話役は慎重にお湯の温度を確認しながら愛紗にかけた。
汚された所を熱心に洗い清める。
それにピクピクと反応する愛紗を見ないように、触覚だけを頼りにした。
風呂から出て世話役が寝る支度をしていると既に愛紗は寝ていた。
起こさないようにそっとベットに下ろすと、世話役は一仕事終わった事に安堵するように息を長く吐いた。