第2章 ほしいものは
「いっ、う!?」
「期待してんじゃねえよ、バーカ」
勝己くんのからかう声が聞こえたけどちょっと構う余裕がなかった。頭突きされた。今のは確実に脳がシェイクされた。信じられない。無防備な女の子になんてことを。
痛みのあまり涙目でにらんでも大した効果はなく、勝己くんは鼻で笑ってノートに向き直ってしまった。多分これはからかわれたんだろう。うぐぐ、悔しい。結局お礼は何したらいいかわからないし、モテる勝己くんとの経験の差を無駄に見せつけられただけだった。額をさすって唇を尖らせる私は、その横で勝己くんがぼそりと零した言葉には気づけなかった。
「俺の理性に感謝しろ、クソ」
結果的に勝己くんのおかげで今回のテストも乗り切ったので、お礼は私の独断でハバネロを買ってあげた。色気もくそもねえとか言いつつぺろりと平らげたので、多分気に入ってくれたんだろう。次も辛いものをあげようと決める私は、勝己くんの全ての言動の真意には、未だ気づかないまま。