第1章 モテ期はこりごり
「轟くん…爆豪くんをいたずらに怒らせるのはやめて…後で全部私に返ってくるから…」
「じゃあ付き合ってくれ」
「じゃあの使い方おかしいよね」
「だから口説くなっつってんだろうがコラ!」
「うるせぇな、彼氏なんだからいちいち目くじら立てずにどっしり構えとけ。ああ、自信がねぇからそんな余裕もねぇのか?」
「……あ?上等だ、もっぺん言ってみろ」
「お願いだからやめて二人とも!!」
一触即発の空気でガン付け合う二人を必死の思いで引き離す。不穏に握られた爆豪くんの拳を押さえると舌打ちと共に収めてくれたが、轟くんの挑発するような笑みは相変わらず。ああもう、本当に勘弁してほしい。
「あの、気に入ってくれるのは嬉しいけど私は爆豪くんと付き合ってるから。友達以上の言動はやめてくれないかな」
爆豪くんにばかり怒鳴らせてしまってるけど、私だって轟くんの図太い行為を良しとしているわけではないのだ。言う時には言わなければ、と轟くんと見返すと、珍しく毅然とした私に彼は驚いたようだった。が、驚いたのは一瞬だけで、次には何もなかったように目を細めて不敵に唇を釣り上げる。この人の図太さはどこからくるのほんとに。
「じゃあ友達としてならいいのか」
「……ん?」
「友達以上の関係は嫌なんだろ。だったら友達として俺が近づく分には問題ねえよな」
「…まあ…友達なら…いいのかな?」
「………!!」
「え?え?なんで爆豪くん怒っ…や、やっぱりさっきの無しで轟くん!!」
「いやだ」
もう了解もらったから無理だとばっさり切り捨てると「じゃあ『友達として』よろしくな、」と手始めに軽いハグをお見舞いしてきた轟くんに、とうとう爆豪くんが分かりやすくキレた。その後の教室の荒れようといったら言葉に言い表せないほど凄まじいものだったので、私は早々にクラスメイトと共に室外に避難した。モテ期なんてもう二度と来なくていい。