【HUNTER×HUNTER】pleats-プリーツ
第109章 109話
西日が傾きを増し、応接室にはオレンジ色の夕陽と濃い影が伸びていた。
先ほどまで届いていなかった日差しが私の身体にも当たり、ジリ…とした熱を感じる。
緊張の中、決してうまく説明できていなかったけれど
ノヴさんは眉間にシワを寄せながら私の話を聞いていた。
私が別の世界から来た事、物語としてこの世界を見てきた事、念能力の事
そして、私の望んでいる事。
本当に必要最低限の情報だけ、慎重に言葉を選んで話し終えた。
すっと息を吸い込み、ノヴさんの反応を恐る恐る待つ。
そして彼は数十秒考え込むと、静かに口を開いた。
「今の話は会長も把握しているのか?」
「はい、サトツさんから全て聞いているかと思います。」
「あの人は信じているんだな、キミのその話を…
到底考えられないが、僕の能力がキミに知られているのも確かだ。
…。そうだな…キミの念能力をここで披露してくれないか?
単純にその力にやや興味があるのと、他人の念能力を探る能力ではないという証明にもなる。」
ノヴさんから興味を持ってもらえている、それは凄くいい兆候に感じた。
門前払いになる可能性も高かったけれど、話も聞いてもらえたし
もしかすると条件さえクリアできれば依頼を受けてくれるかも知れない。
私は少し心をはやらせ、彼が言い終わる前にネクタイを引き寄せてみせた。
「!?」
ノヴさんの様な大人が驚いている表情を見るのは少し楽しい。
奪ったネクタイを得意げに持ち上げて見せつけると、彼は自分の襟元を触ってから指で眼鏡を持ち上げた。
「素晴らしい念能力だ。しかしそのオーラ…キミの生命エネルギーは一体どこから…。」
気を取り直しながら誤魔化す様に称賛したかと思えば、最後の言葉は殆ど聞き取れないくらい小さい声で呟いている。
確かに私は練が下手なので、たかだかネクタイを転送するだけにしては膨大なオーラを見せてしまったかもしれない。
毎回他人が引くほどの量を出してしまっているのかと思うと、自覚は無くてもなんだか少し恥ずかしかった。
「本来であればこのような形で仕事を受ける事はないが。
今後、こちらからもキミの念能力が必要になった時に利用させてもらう。それが条件だ」