第9章 9話

——————————————————————————————

「・・ひっく・・・ずず・・ぅっう・・・、・・・ずず・・う・・・・うっう・・・・」

「酷い顔してるねぇ、そんなに怖かったのかい？」

「・・・・・・っう・・・・ずずっ・・・」

卵を煮ている間、私はずっと腰が抜けて立てないでいた・・・。

当たり前だ・・
どんな絶叫マシーンよりずっと怖かった
漏らさなかっただけましだ

「キミはおもしろいなぁ・・、あんまり泣いてるとまたやりたくなっちゃうからヤメなよ」

！！！！！

そのヒソカの発言に私はッバっと顔を上げた
なんてこと言うんだこの人は
私が嫌がってるのを楽しんでいるんだ・・・。

「酷いでず！私もうごんなのぜっだいいやでずから！！」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔のままそう叫んだ私を見てヒソカは一層嬉しそうに笑った。

「ほら、キミが自分で獲ってきた卵だよ、せっかくなんだから食べなよ」

食べ物なんかで私の気が良くなるとでも思っているんだろうか・・

私はふてくされながらもヒソカの差し出したゆで卵を受け取った。

・・・これがクモワシのたまご・・・

しかしどんな味なのかすごく楽しみだったのは事実、私はドキドキしながら卵を一口食べた。

「！！ぉいひい・・！」

調味料なんて必要ないほど濃厚で卵の味がしっかり口に広がり
ふわっと鼻を抜ける香りとコクがなんとも言えず飲み込むのがもったいないほどだった。

「おいしい？ボクのもあげるよ」

「ほんとうですか！」

「それでキミの機嫌が直るんなら、はいどうぞ」

・・・・・・・結局すっかり丸めこまれてしまった。

ヒソカが私にあんな事言うなんて、なんだかキャラじゃないなぁ
はじめは殺されてしまうかもと常に緊張していたけど、段々扱いがフランクになってる気がする。

私は2個目の卵を食べながらそんな事を考えていた。
だってお腹空いてたんだもん