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見つめて、声で

第1章 出会いは突然に






「良平さん、流石にそれはまずいですよ。」


すぅ、と耳の奥に自然に入ってくる甘い声。その声は自分よりも後ろから聞こえて。


木村さんの視線に流されるように後ろを見れば、


「界人君っ……!!!」


「あ、初めまして。」


ラフなTシャツ姿の石川界人君。


手にはコンビニのかごが下がっており、中にはビールと思わしき缶とおつまみが大量に入っていた。


界人君はそれをがさりと一度持ち直した後、言葉を紡ぐ。


「女の人の顔を覗き混むって下心ありすぎじゃないですか。」


対してその言葉を待ってました、とでもいうように木村さんはニコニコ笑う。
まるでいたずらが成功した無邪気な子供のように。


「いやー、そんなこと言うならのぶはカノジョの肩に手を置いてたからね。」


え、と引くような体制を見せるのは界人君ではなくのぶ君。慌ててすぐに訂正する。


「下心なんてありませんよ!本当に心配したんです!」


「どーだか。」


ねー、と女子高生の恋ばなのように界人君と顔を見合わせる木村さんの表情は本当に楽しそうだ。


それにオタオタしているのぶ君も日常の風景なのか、背景のコンビニの棚がよく似合う。


でも……これは。


(可愛すぎるっ……!)


体のだるさや痛みはあるけれど、それを緩和するくらい、今の私は幸せな状況にある。


ハイキューの新刊は結局どこにいったか分からないけれど……。


影山役の石川界人君。
木兔光太郎役の木村良平さん。


それに_______……。


(私の大好きな西谷夕役の岡本信彦君。)


目の前にいる、この声が間近で聞ける。


いつも画面越しにニコ生を見たり、ラジオを聞いていたりはしたけれどイベントには行ったことはない。


だからこそ、会えるなんて思ってなかった。


(最近やなこと続いてたけど……。)


目の前で私たちを忘れてのぶ君をからかう木村さんと界人君。


私は彼らにばれないように小さく微笑んだ。


(幸せ。)



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