第14章 猫⑭
オレンジ色だった部屋はいつの間にか暗くなっていた。
暖かな毛布の中にいるとまた寝てしまいそうだったので、私は研磨に声をかけ毛布から出た。
「研磨、もう暗くなってきてるから帰らないと」
「…ねえ、あやね。それよりこっち来て」
毛布の中から顔だけを覗かせる研磨が可愛いくて思わず口の端が上がる。
「ふふ、研磨は案外甘えっ子?」
私がそう言うと眉間に皺を寄せて不満そうな顔をさせた。
「何それ?あやね、来てくれないの?」
今までこんな甘える研磨を見た事が無いので、私もつい甘くなっているのが分かる。
私が研磨の近くに行くと腕が腰に回され、私の膝の上に研磨が顔を乗せた。
「あやね、こうされるの嫌?」
「え?…研磨もズルイ事聞くね。もし嫌って言ったらどうするのよ…」
「嫌なら嫌にならなくなるまで待つよ」
腰に抱きついて膝の上で瞳を閉じながらそう言う研磨が何と無く猫みたいだった。
夢に現れた猫を思い出し、黒と金の二色の頭を撫でる。
「…嫌じゃ無いよ」
すると腰から腕が離れ研磨が毛布から少し身体を出すと、私の目の前まで顔を近づけそっと私の唇に微かに指が触れた。
「ここに触れたい。って言っても?」
吸い込まれそうなぐらい真っ直ぐ私を見る研磨。
「指なら、嫌…」
目の前で微かに微笑む研磨が指を離すとゆっくり顔を近づけ私の唇に研磨の唇が当たる。
軽く触れた唇は直ぐに離れ、柔らかく微笑む研磨。
「これなら良い?」
私もつられるように微笑み研磨に抱きついた。
「うん…今のが良い。研磨大好き…」
私達は時間を忘れしばらくの間抱き合っていた。
ずっと気になってた研磨。
研磨を知れば知る程、研磨を好きだってはっきり言える。
この気持ちに背中を押してくれたクロ。
たくさん傷付けたのにいつも優しく思ってくれた大切な幼馴染。
きっとこの先私達の関係が変わっても変わらない事もある。
私の大切な人達。
その事実だけは絶対に変わらないよ。