第11章 猫⑪
「………」
クロと歩いている帰り道、おれが無言で返信を送っているとクロの重い腕がおれの首にかかる。
「重い…」
「いつもの事だろ?で、どうなった?」
「…あやね土曜日試合見に来るって」
「へーって、そうじゃねぇだろ。あやねと付き合ったのか?」
「付き合ってないよ」
「……へー」
クロが真顔でおれを見てる。
言いたい事は分かる、だからおれはあやねと話した事、思った事を隠す事無く全部クロへ伝えれば、何度か相づちをうっておれの話を聞いていた。
「だから、あやねが本当におれと付き合ってもいいって言うまでは幼馴染のままだよ」
「そうか…あやね次第って事だな…」
どこか寂しそうなクロにやっぱり違和感を感じた。
「クロはあやねに言わないの?」
「あ?」
「あやねの事好きなんでしょ?」
「あのな…ったく、本当度胸あんなお前…」
眉をハの字にさせて笑うクロ。
俺はただ、自分だけが気持ちを伝えるのが何だか卑怯な気がしただけ。
おれよりあやねを想ってた時間は絶対にクロの方が長い。
「もし今俺があやね取ったらどーすんの?」
「どうもしない。おれにとってはクロもあやねも大切だって思うから。そんな二人が付き合うならそれでいい…あやねがクロを選んだって事だし」
おれは地面を見ながらそう言うと、肩に乗ってた重い腕が離れた。
少しだけ顔をクロの方へ向けると、クロも地面を見るように視線を下へと向け微笑んでる。
「クロ?」
「……安心しろ。俺はもうフラれてるから…それに、俺も同じだ」
視線がおれに向くといつものニカっと笑うクロになっていた。
「大切な幼馴染が付き合うなら祝福する!」
「まだどうなるか分からないけど」
「そこは素直に礼を言えよ!!」
「………」
「何だその顔!?」
「別に……」
「別にって顔じゃないだろっ!?」
「クロ……うるさい」
いつもの日常の一コマへと戻る。
クロがそうしたいんだと思う。
あやねに気持ちを伝えてるなら、もう遠慮する事無く進むだけ。
それに本当は心の中で何度だって言ってるんだ。
『クロありがとう』って。