第6章 猫⑥
自分の身体に、胸に付いた赤い痕は日に日にその色を変えていく。
身体の変化はいずれ元へ戻るけど、気持ちまではそう簡単には変化しない。
私は留守電に入るクロの言葉を買い物帰りの今、こんなタイミングで聞いて締め付けられる思いになっていた。
この留守電から何日経ってる?
まともに連絡もせず、一方的にクロとの関係を幼馴染と言う枠に戻して。
本当に一方的過ぎて申し訳ない。
そんな事を考え無意識に進んでいた道に、歩いていた私は驚きを隠せなかった。
三年間通っていた道、音駒高校へと続くその道はあまりにも自然過ぎて、私自身が大学生だって言うのを忘れてしまいそうなぐらい自然と進んでいたからだった。
「音駒…去年まで通ってたんだよね」
夕方になる時刻、門から出る生徒の姿はほとんど見えない。
運動部の練習する声が微かに聞こえ、私はその声に誘われるように中へと入っていた。
その声は校庭でサッカーをする声だったけど、中に入った事で聞こえる新しい声は体育館からだった。
体育館へ近付いてみれば、三人の女子が扉の隙間から中を覗いている。