第4章 猫④
嫌な気分になりながら無情にも鳴り続けるコール音。
ようやく留守電に繋がって焦ったように言葉が出ていた。
「あやね、俺やっぱ無理だわ。お前の事ただの幼馴染で終わらせんの。あんなメールよこされて、『はい、分かった。研磨と上手くいくといいな』なんて言えねぇ。俺自身驚くぐらいだよ…こんな女々しい気分に俺をさせるあやねは凄いんだぜ?なぁ、電話ぐらい出ろよ……」
留守電の時間って短いな。
切れてる。
「あーくそっ……」
寄りかかるブロック塀に頭をつけ星が1つも無い夜空を見上げる。
あやねを思い研磨も思う。
どっちも大切なんだって分かる。
だから二人が付き合うなら俺は完全に手を引くが、はっきりしない微妙な関係に黙って引き下がるつもりは無い。
「……はぁ。こんなメールほんっとよこすなよ。決心揺らぎ過ぎてカッコ悪りぃだろ…」
俺は大きく息を吐き出すと、部屋で待つ研磨の元へと重い足取りで向かう。
自分の部屋のドアを開けて入ると、研磨はいつものようにゲームをして待っていた。
「悪りぃな!時間かかって」
俺がそう言えば、ゲームをする研磨の動きが止まり俺を見上げる。
「クロ、あやね来た」
「はぁっ!?来たってここに!?」
あんなに電話したのに、俺の部屋に来てただと!?
あいつ!!…こっそり来て、そうまでして俺に会いたくないわけね…。
「あやね、何か言ってた?」
「特に言って無いけど…」
研磨が俺の顔をジーッと見てる。
その真っ直ぐ過ぎる研磨の目は、たまに全てを見透かされるんじゃ無いかって思う事がある。
今はあんま、そんな目で見て欲しくない。
「あやねとクロはお互い好きなんだと思ってた」
何で……今それを言うんだか。