第21章 猫と私⑥完
「研磨来週試合だよね?」
「うん、試合だよ」
「相手は強いの?」
「どうだろ。昔はうちの学校とゴミ捨て場の決戦とか言われた程の関係だったみたいだけど」
「へ〜何か面白いね」
「来るの?」
「行けたらね」
慣れたあやねの部屋での会話。
いつもと同じ場所でいつもおれが使うカップを使う。
こんな当たり前な事にいつも感動してる。
おれの前で楽しそうに話すあやねに自然と口角は上がり、そんはあやねを見てるのが幸せって感じていた。
ひとしきり話し終えたあやねが自分のカップに入るコーヒーを一口飲み、そのカップを置くのを待ってからおれはあやねの頬に触れた。
あやねはおれの手に重ね、おれを見て柔らかく微笑む。
「最近、研磨からの愛を凄く感じます」
「感じたの最近なんだ」
「あっ!ごめん、実はもっと前からです!」
焦って言いなおすあやねがなんか面白くておれは少しいじわるしてみた。
「おれ、愛情表現下手だもんね」
「そんな事無いからね!?本当にごめん!」
「あはは、おれの方こそごめん。いじわるしてみた」
笑って言えばあやねは安心したみたいだったけど『焦ったじゃん!』って言うとおれを押し倒してきた。
おれはそのまま押し倒され、おれの上にまたがるあやねを静かに見ていると顔に黒髪が触れた。
その毛先を見て触れればいつ触っても柔らかいって感じ、おれはあやねをもう一度見ればキスをされた。
唇が離れ同じようにまたあやねがおれを見ると髪を耳にかけて、その仕草は何度見ても色っぽい。
「研磨押し倒しちゃった」
「押し倒された。…あやねおれといて楽しい?」
「そんなの当たり前でしょ?逆に聞くけど研磨はどうなの?私といるの」
そう聞くあやねにおれの中で1番の笑顔を作ってから、あやねの腰に腕をま
きつけおれの上に抱き寄せる。
「楽しいに決まってるでしょ」
これからもずっと変わらない。
あやねといるのが楽しい気持ちも好きだって気持ちも。
おれの想い人なんだから。
【完】