第20章 *猫と私⑤
研磨が言おうとしてた事を嫌って程理解してる。
きっと、もう研磨は気付いてるんだろうな。
しばらく頭を洗う音だけがする浴室、さっき迄の欲に満ちた浴室とは全く違う空気に私自身どう言ったらいいか悩んでいたら、研磨の指が止まっていた。
「…何も言わ無くていいからね。ただ、誰かと比べられるのだけは嫌だったから。あやねが歩んで来た道にちゃちゃ入れる気は無いから…ごめんね」
「謝らないで」
私は上を見上げれば研磨の不安そうな顔が見え、そんな顔をさせる研磨の頬を触れる。
「…嫌な思いさせたのは私だから…ごめんね。研磨は優しいからな。もっと怒っていいんだよ?」
「あやねは別に悪い事してるわけじゃ無いよ。おれが嫉妬してるだけ」
「ふふ、ごめんね。私、嫉妬してるって聞いて…すっごく喜んでる」
すると小さく笑う研磨は『流すね』と言ってシャワーで頭の泡を流してくれた。
私は目を閉じ流れる泡と共にクロとの事が流されていくんじゃないかって気持ちになっていてハッとした。
私は本当に自分勝手だなって自嘲気味に笑みが浮かんだ。
お風呂から出てからはいつも通り二人の時間を過ごし、研磨は家へと帰った。