第8章 其ノ漆
櫻『それにしても… 御兄弟とても仲が
よろしいのですね』
大『ああ…まあそうだな…。
大切な家族だ』
櫻『そうですか… 私も…智様の…
家族…になりとうございます…
大事に…思われとうございます…』
少しの沈黙の後、小さな、消え入りそうな声でそう言うと頬へと涙が伝い流れてゆく。
大『え…
翔…殿… 泣いておるのか?』
そう言って慌てたように近づいてくると、そっと指で涙を拭ってやる。
大『ほら。泣くでない。 涙が落ちて傷に染みるぞ』
櫻『…はい。 …ありがとうございます』
そう言うと、翔はそのまま智の首へと、両腕を巻きつけるようにして口づけをしてきた。