第1章 暁の恋
大『ああ…。 それじゃ頼むよ』
なんとなく視線が下におりたような気がしたが…手ぬぐいを泡立てて兄の背中を擦る。
二『強さ…いかがですか?』
大『ああ…。 気持ちいいよ。 それで
今日は何か話たいことあったのだろう?
良き娘でも出来たか?
それなら私に遠慮など無用だからな。いつでも私に紹介…
』
二『いえ…そうではありません。
ただ私が兄上と… いえ…たまには童心に返ってみたくなっただけです』
喉の奥がキュルキュルとしてつらくなる気持ちを抑えるように、重ねて言葉を返す。
大『また…そんな顔をして。 お前はただ一人の私の弟だからな。 あまりためこまず何でも話すのだぞ。』
そう言うと顔を覗き見ながら、頬をそっと撫でてきた。
すると、それを遮るようにコツコツと引き戸を叩く音がする。