第20章 二・其ノ玖
東『翔。 もう寝てしまったか?』
櫻『いえ… 先生。 どうぞお入り下さい。』
東『いや… どうも嬉しくてな。 もう少し話たいのだ。』
櫻『勿論でございます。 今日は、最後までお相手致しますゆえ。
そう思って先程、才蔵に布団も用意してもらいました。ふふ。』
東『そうか。 そうか。 ほんに、久方ぶりの幸せだな……』
そう言って、隣に敷かれた布団に東山がもぐりこむと二人で顔を見合せて笑いあう。
櫻『私も、両親も兄弟も幼きころに亡くしておりますので、
ほんに、久方ぶりの幸せにございます。ふふ。』
そう言うと、先生の手が布団から伸びてきて櫻井の手をそっと握った。
東『そうであったか…… 翔も大変な思いをしてきたのであろうな……
これからは、何でも私に相談して良いのだからな。
私が翔の為なら何でも致してやるからな。』