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ナツコイ【庭球】

第4章 ホーンテッド・スクール〔日吉若〕


「…それは、告白、ですか」
「かもな」
「かもなって…」
「これまでもさんざんアプローチしたのに全然響いてなかったからな」
「へ?」
「ほら」
「え、だって日吉と話すのって委員会くらいで」
「…これだからバカは」


はあ、と露骨なため息。
いつもこんな感じでバカにされてばかりだった。

これが、日吉なりのアプローチだったということか。
ついさっきまで、苦手だとか恨んでやるとか思っていたのに。
急に見違えてしまう。


「…わかりづらすぎ」
「それはお前がバカだからだろ」


私の頭にぽんと手を置いて、日吉が立ち上がった。
「立てるか?」と差し伸べられた手を取ってはみたものの、まだ腰に力が入らない。


「…ごめん」
「まあ、半分は俺のせいだからな」
「いや、半分以上。ほぼ全部日吉のせい」
「…まあ、な」


握られたままの手。
ここに来るまでとは、まったく違う意味を持っている。
心臓が早鐘を打っているのはきっと、さっきの恐怖のせいだけではなくて。

再びひざまずいて、日吉が私の顔を覗き込んだ。
これまでに見たことがないくらい、優しい目。
足元に転がった懐中電灯の柔らかな光をたたえたそれが、ゆっくり近づいてくる。
視線を逸らせない。


「目くらい閉じろ、バーカ」


唇に直接落とされた響きは、とろけるほど甘く。
ここが夏休みの学校だということも、肝試し中だということも、一瞬すべて忘れてしまうくらいに。
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