• テキストサイズ

ナツコイ【庭球】

第1章 太陽とギンギツネ〔仁王雅治〕


夏が好きだ。
他の季節よりも、ずっとずっと。
暑い暑いと、口先ではつい言ってしまうのだけれど。
ギラギラした太陽に照らされると、記憶がとても鮮やかになるから。

だから初めてできた彼氏とは、夏らしいことがしたかった。
海に行ったり、花火をしたり。
虫は得意じゃないけれど、彼と一緒ならキャンプだっていい。


なのに。


「ねえ、雅治。ねえってば」
「なんじゃ」
「どっか行こう?」
「どっかって、どこに行きたいんかの」
「ほら、花火とか! プールとか海とかさ、いろいろあるじゃん」
「却下」
「なんでー? せっかくだから夏っぽいことしたいのに」
「暑いんは嫌いじゃ」

ベッドに寝転がっていた雅治は、そう言うと寝返りをうって壁の方を向いて。
布団を顎まですっぽりとかぶって、小さく丸まった。
エアコンの効いた部屋から出る気はこれっぽっちもないらしい。
雅治のパーカーのフードが、くしゃくしゃになって布団からはみ出している。

もともと出不精のきらいはある人なのだけれど。
私にはもったいないくらいにかっこいいから、実際二人でどこか出掛けたら、自慢するより先に綺麗な人に取られてしまわないか心配になるのだろうけれど。
そうやってそわそわする私を、きっと雅治はプリッとかなんとか言って笑うんだろうけれど。

それでもいいから、雅治と夏らしい思い出を作りたかった。
私が夏が好きだからというだけではなくて。
無理やりにでもどこかに連れ出さないと、雅治の夏はテニスだけで、思い出に私の入る隙間なんてどこにもないだろうから。
/ 40ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp