第1章 熱帯夜
「好きって何ですかー?」
啓太は仰向けになり、右腕で目隠しして目を閉じる。
「中学生みたいな質問するね。」
香苗はけたけた笑った。
「香苗さんには好きな人いないんすか?」
「いないねー。」
「なんでです?」
「なんでって、そりゃまた変な質問するね。」
香苗はまた笑いながら、今度はベッドの上に腰掛けた。
「好きかー。あたしも分かんないから、今好きな人がいないんじゃない?」
「じゃない?って、聞かれても困りますよ。」
「そうだね。」
母親が子供を寝かしつけるように、香苗は啓太の頭を撫でた。