第11章 約束(1)
10月下旬。
国体から約1ヶ月後、春高の宮城県代表選は仙台市体育館で行われる。
全3日間の日程で、俺たちのようなシード校と1次予選を勝ち上がった高校、合わせて16校が出場する。
トーナメント方式で行われる試合は、初日が3回戦のみ、2日目が準々決勝と準決勝の2試合が行われ、決勝は最終日だ。
俺たち白鳥沢は初日をストレートで勝ち、この2日目に臨んでいる。
「天海さん、明日の最終日だけ?」
今日もスタメンから外れている天童は、バスから降りるとそのことをまず最初に確認してきた。
「今日の午後に来ると言っていた」
「学校は?」
俺が天海に最初にした質問を天童も口にする。
代表戦の日程は木曜始まりの土曜終わりだ。
出場選手や学校関係者以外の、いわゆる一般参加者と呼ばれる観戦者は、その大半が最終日の決勝戦のみに足を運ぶ。
「1限の選択授業だけだと言っていた」
「…それ、本当に? サボりじゃないの?」
「俺が知る由もない」
「確かにね」
コーチから声が掛けられ、3年の主将が「行くぞ」と声を張る。
俺と天童は話をやめて、先輩たちの後をついて行った。
館内に入り玄関ホールを抜けて、中庭へと通じる中央ホールの一角に俺たちは陣取ると一旦荷物を置く。
コーチたちが受付へ出向いている間に対戦相手の話しなどをし、トーナメント表の反対側の山について話が及んだ矢先のこと。
「来たな…」
瀬見が呟いた。
全員が瀬見の視線の先を追う。
体育館入口から列をなして入ってきた団体の中央、俺たちが最も忌み嫌っていると言って過言ではない青葉城西の優男がちょうどこちらに顔を向けた。
「あー、目ぇ、合っちゃった」
「おい、変なちょっかい出すなよ、及川」
「出さないよー、及川さんバカじゃないもーん。ちょっとご挨拶にだけ行ってくる」
「それがちょっかいと…おい、及川ッ!」
涼やかな、だからこそわざとらしさを感じずにはおれない笑みを浮かべた青城のセッター及川が、チームメイト――北一時代からコンビを組んでいる岩泉だ――と二言三言交わしてからこちらに歩を向けてくる。
「こっち来んのかよ」
「若利くんって“及川ホイホイ”だからね」
「話すんならあっち行って話して来いよ、若利。俺ら、及川の声なんざ聞きたくもねーからな」
俺は、2年の輪から追い出される形で及川の元へ行った。