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【HQ/R18】二月の恋のうた

第31章 二月の恋のうた(2)


「ゃっ…」

触れただけでビクリと揺れた身体に軽い目眩のような興奮を覚え、敏感な箇所を爪先で擦る。
天海は短く鳴き、腰を浮かした。
だがすぐに、立てた膝で俺の腕をホールドする。

「天海…膝が邪魔だ」

下着を指で引っ掛けるようにズラし、直接触れようとすると、
「邪魔だ、じゃ、ない…!」
天海が強く言い放つ。

その勢いにこちらが止まった瞬間を見逃さず、天海は俺を押しのけてソファから降りた。

「場所! ここ、カラオケ!」

膝丈のスカートを、それ以上伸ばしようがないのに下へと引っ張りながら言い放つ。
俺は、身体の昂ぶりを大きく息を吐くことで抑え、彼女に尋ねた。

「場所を変えればいいという話か?」

天海は口を開く。
開いて、何も言わずにそのまま閉じた。
何を言おうとしていたか気になり、俺は名を呼んだ。

「天海?」
「本当に、もう…もう!」
「天海」
「聞こえてます! いいです!」
「…それは、付き合うことに対する答えか、それとも、お前を――」
「どっちも! そこまで言わせない!」

場の空気を一変させるほどの叱責を放ち、彼女はすぐさま近くに置いておいた自分の鞄を手に取ると扉へと向かう。

「天海」
「先に行き、ます!」

なぜか敬語で言い切って天海は部屋から出て行く。
真っ直ぐ背筋を伸ばし、颯爽と去るその後ろ姿は凛として美しい。

俺が惹かれ、焦がれ、求めた、バレー以外の存在。

俺は、後を追う。
己が標を見失わないように。

廊下へ出れば、俺たちを待っていたかのように天井のスピーカーから曲が流れ始めた。
特徴的な前奏は、今日耳にするのが2度目の天海の好きな――夏に出会った“俺の”天海の好きな曲。

気付いた天海が、膨らませていた頰を元のサイズに戻して天井を仰ぐ。

「この曲を若利くんと聴くなんて…不思議な巡り合わせ」

俺は天海の傍らに立つ。

「…若利くん」

向けた視線に交わる真っ直ぐな眼差し。

「好きです」
「…知っているが?」

突然の告白に応えれば、数秒置いて天海が軽く吹き出す。柔らかく眩しい笑みに俺も頰を緩めた。

響く恋の歌――これは、今日から始まる俺たちの「二月」の恋のうた、だ。

 (おわり)
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