第23章 クリスマスリレー小説ー夏津ー(未完)
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「なんだ、そりゃ」
夏津は毛玉を膝に乗せたまま、こちらに顔を向けた。
師走の寒空のもと、二人で縁側に腰を下ろし庭を眺めている。
「その日は家族とか大切な人と一緒に時間を過ごして、お祝いをするんだって」
煌月に聞き慣れない西洋の文化を聞き、いち早く彼に知らせたかったミルクは心弾ませ口をつく。
「上様代理」として城に上がっている彼女にとって両親に会えない毎日は淋しいが、夏津と共にいる時間はかけがえのないものだった。
大切な人……
それは彼以外に思い浮かばない。
「くだらねえ」
「え?」
想像もしなかった言葉に顔を上げた。
「庶民にとって年を越すのも一苦労だ。この時期は口に糊して凌ぐってのに、一部の金持ちの道楽じゃねーか」
確かにミルクも城下の生まれであり大店の娘ではないため、そのことは百も承知しているつもりだ。
少し苛立ったような夏津の横顔を見つめる。
ミルクにとって江戸城で過ごす初めての年の瀬。
正月には盛大な催し物がなされるだろう。
だが、その前に夏津と二人だけの時を過ごせる口実を探していた、それだけだったのだ。
「ホント、くだらねーよ」
それは小さな声だった。