第21章 過ぎ去りし時 ー秀吉ー
「今日すごく嬉しいことがあったんです。」
仕事が一段落すると、私は秀吉さんの部屋に来ておしゃべりをする。
秀吉さんはいつも美味しいお茶を淹れてくれて、楽しそうに話を聞いてくれる。
秀吉さんもその日の出来事を話してくれて、たまに私が信長様に対して嫉妬で拗ねたりもする。
私たちは、少し前に恋仲になった。
"妹みたいだから"、"お兄ちゃんみたいだから"って、何かと側にいるようになったのが始まりで。
でもそれが互いにただの口実になっていることに気づき、兄妹のままではいられなくなった。
「そろそろ遅いから、もう部屋に戻れ。」
秀吉さんのいつもの台詞。
「いやです、って言ったら?」
今日は少しだけ抵抗してみるって決めてきた。
「その時は抱えて部屋に連れて行くだけだ。」
「……じゃあ、ちゃんと自分で部屋に帰るから一つだけお願い聞いて欲しいな。」
「なんだ?」
「おやすみなさい、の口づけして。」
「したらちゃんと帰れよ?」
「うん。」
秀吉さんの指が私の顎をすくい、唇が近づいた。