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【イケシリ】sweet dreams【短編集】

第17章 千夜一夜物語 ー信長ー


「なぜそのように遠くに座る。
もっと近くへ寄れ。」

入り口を入ってすぐのところに座ってカチコチになっている私に信長様が言った。

「夜伽をしなくていいって言われるまで、そちらへは参りません。」

「貴様が来ないなら俺が行くだけだ。」

立ち上がろうとする信長様を慌てて制止する。

「ストーップ!じゃ、なくて……待って待って、来ないで!
ほら!!」

後ろ手に持っていたくまたんを差し出した。

「なんだそれは?」

「ぬいぐるみ、です!
これ、触ってみたくないですか?
こんな素材、見たことありますか?」

今日のネタくまたん、がんばれ。

「動物の毛でも使っているのか。」

「違います。
これは、人の手で作られた動物っぽい素材の布です。」

出来るだけ信長様に伝わるように、言葉を選んで話す。

「貴様はそれをどこで手に入れた。」

「布はこういうのを作ってる人から買いました。
ぬいぐるみ自体は私が縫い上げたんです。
私、この時代の人間じゃないんです。」

「ほう。」

よし、掴みはオッケーだ。
私は続けて未来から来たことを順を追って話した。
最初は怪訝そうな顔で聞いていた信長様も、信じてくれたみたい。

「このぬいぐるみ、すっごく気持ちいいんですよー。
もっふもふ。ふっわふわ!」

くまたんを触りたくなるように、頰ずりして見せた。

「くまたんって名前付けてるんですけど……、」

言いながら信長様の反応を見ようと視線を戻すと、信長様がまた立ち上がろうとしていた。
もしや、めっちゃ触りたくなってる?!

「だめですよ!
夜伽を命じないって約束してくれるまではこっちにきちゃだめです。
どうしますか?」

「約束したら、その……くまたんとやらを触ってもいいのか。」

きた!
信長様、すごく触りたそうにしてるよー!

「いいですよ。」

「わかった。ただしその約束は今夜に限ってだ。」

しょうがない、手を打とう。

「わかりました。
じゃあ、私がお側に参ります。」


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