第16章 月夜の待ち合わせー政宗ー
私は手に風呂敷包みを抱えて城下町を歩いていた。
"大切な人への贈り物にしたい"と、秀吉さん伝てでお仕事の依頼を受けて、着物を仕立てさせてもらった。
喜んでもらえるといいな。
少し心が浮き立っているのは、着物のお届けが終わったら政宗と約束をしているから。
今日は十五夜だから一緒にお月見しようって、月の見える丘で待ち合わせした。
まだ残暑の残る日中、お届け物の道行きも一苦労だけどお天気がいいってことは夜のお月様もきっと綺麗だろうな。
「こんにちは。」
依頼主は男性で、明日想いを寄せる人にこれをプレゼントするそうだ。
その子の好きな色を指定されて、反物選びから気合いを入れた。
「綺麗な刈安色の反物が見つかりましたよ。
気に入ってもらえるといいんですけど。」
私は風呂敷の結び目を解いた。
「え、」
「あれ?」
間違えた!
中から出てきたのは藍色の着物。
もう一つ、出来上がって届けるだけになっていたものと包みを間違えて持って来ちゃった!
「ごめんなさい!
すぐ取りに戻ります!」
「いいですよ、明日渡す予定なので今日中に届けば。
お待ちしています。」
男性はにこにこしてそう言ってくれたけど……。
ここまで往復1時間かかる。
待ち合わせに完全に間に合わない。