第10章 家光様の帰城ー四日目・鷹司ー
「火影、おまえには悪いことをしたな。
なんでも欲しいものを言え。」
城を出て、火影と並んで歩く家光の姿があった。
「何言ってるんですか。
俺が一番欲しかったもの、家光様のせいで絶対手の届かないものになっちゃったんですよ。」
「だから、悪いことをしたと言っているではないか。
他に欲しいものはないのか?」
うーんと考える火影に、家光が言った。
「欲しいものがないなら、なしだ。
そのかわり、おまえは私がもらう。
これからは本格的に城下の暮らしになるが、それでもついてきてくれるか?」
「え、それ、どういう…… 」
「野暮なことを聞くでない。」
家光は火影と目を合わせない。
「いいですよ。
これからもそばでお守りします。
こんな顔の家光様が見られるなら、楽しそうだ。」
「見るな。」
耳まで赤くなった家光は、反対側へ顔をそらす。
「ふふ。」
「笑うな火影!」
もう空はだいぶ明るい。
ここにも新しい朝が訪れようとしていた。
ーおまけ・おわりー