第10章 耐えられない想いは重く。
「そんな風に見える?」
「…なんか、機嫌良さそうな、気がして…」
違うのか、と海堂はほんの少し首を傾げるようにして、僕から目を逸らした。
「んん…当たらずとも遠からず、って感じかな?」
確かに、今、僕はすごく嬉しい気持ち。
だけど同時に、これじゃダメだって思ってる。
海堂にまでわかるほど、僕の心が浮かれているだなんて。
この気持ちは内緒にしよう、って決めたのに全然出来てないみたいだ。
手をぎゅっと握り締める。
ちゃんと、隠さなきゃ。
「新年だしね。浮かれちゃうよね」
「…そっスね」
誤魔化されてくれたのか、海堂はそう言って他の部員はまだ来ないのか、と辺りを見回している。
もう少しだけ、二人だけでいたい…なんて。
思っちゃいけないんだよね。
「早いな、二人とも」
「あ…」
手塚と大石がやってきた。
二人っきりの時間はこれで終わり。
海堂の意識が全部向こうへ。
特に手塚を見る目がキラキラしちゃって。
「あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとう、今年もよろしくな」
「ああ、よろしく」
……ズルいよ。
ホント、羨ましい。
「あけましておめでとう、二人とも」
「不二か。今年もよろしく」
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
そうこうしていると、マフラーをぐるぐる巻きにした英二が走ってくる。
その後ろから桃城が追いかけるようにしてやってきた。
「ちょ、英二先輩!! マフラー!マフラー返して下さいよ~!」
「っへへへ! こーっこまでおーいでーっ! あっ!不二ー!あけおめ~!」
ふふふ。一気ににぎやかになりそう。
海堂は…うんざりした顔をしていて、ちょっと笑ってしまう。
よっぽど桃城のこと、嫌いなんだね。
「揃ったか」
「そうだな。乾は喪中だから、これで全員だ」
「それじゃ、しゅっぱーつっ!」
英二を先頭に僕たちは神社への階段を登り始めた。