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【庭球・BL・海不二】黄昏に映える人

第7章 気に入らない。


「……」
「……」

 海堂が何も言わないから、僕も何も言わなかった。
 静寂が、しばらく僕たちの間を流れた。
 窓の外から、他のクラブの人の声や、風の音が聞こえてくる。
 それでも、僕たちの間に会話はない。

「………ねぇ、海堂」

 それに耐えられなくなって、僕はじっと天井を見ながら海堂に話しかけた。

「どうして、熱があるってわかったの?」

 僕自身だって、わからなかったのに。
 気付かなかったんだ、本当に…。
 何だか、調子が悪いなぁってぐらいにしか意識してなかった。

「顔色、少し悪いみたいだったから…」

 『ずっと、見てたんスよ』

 …え?
 ずっと、見てた?
 嘘。だって、乾と喋ってたじゃない。

「うそ。僕が見てる限りでは…乾と、話してたよ」

「…不二先輩…見てたんスか?」

「…うん」

 何だか、気になって。
 海堂…大きくなったよね。
 そして…強く、なったよね。
 僕は、変わったのかな?

「乾と…何、話してたの…?」
「…別に…ただの、雑談スよ」
「そう…」

 メニューの話じゃ、なかったんだ。
 …乾と、雑談…。
 何だろう? このもやもやは。
 …ああ…海堂が、乾になついてるからかな。
 そう、あれに似てる。
 裕太が、向こうに行っちゃったときみたい…。
 弟を、取られちゃったみたいな、気分…かな。

「…不二先輩?」
「ん…?」
「大丈夫スか? 何か…ものすごく…」
「…?」
「怖いっていうか…機嫌、悪そうな顔してるっスけど」
「や、やっぱり…結構しんどいみたい…」


 ああ、びっくりした…。
 機嫌悪いの、顔に出ちゃってたのかな。
 しかめっ面になったのを熱のせいにした。
 それにしても…熱があるって自覚してから、段々体が熱くなってきたような気がする…。
 はぁ…と僕は熱い息を漏らす。
 海堂は再び僕の額に触れた。

「だいぶ、熱上がってきたみたいスね…」

 じっ、と海堂を見つめていたら、目があった。

「…不二先輩…?」

 心配そうな瞳が、僕を見る。
 と、そのときだった。ガラリと音がして、保健室に誰か入ってきた。
 シャッとカーテンが開けられ、そちらに目を向けると、そこには乾がいた。

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