第7章 気に入らない。
フェンスの外。海堂と乾が何か話してる。
きっと練習メニューのことなんだろうな。
僕はその様子を横目で見ながら、ボールを打つ。
でも、思ったところに上手く飛んでいかない。
なんだか最近、僕はイライラしているような気がする。
それに、今日は体もダルくて、朝からずっと力が入らない。
やる気がないっていうか…。
疲れてるのかな…。
僕は頭をふるふると振って、ボールに集中しようとした。
けれど、ボールが段々かすんで見えてきてミスを連発。
おかしいなぁ…?
「不二、体調悪いのか?」
球出しをしていた大石が駆け寄ってきて、僕の顔を覗き込む。
「そんなこと、ないと思うんだけど…?」
そう答えかけたら、海堂がコートに入ってきた。
あれ、乾との話は終わったのかな?
「どうしたの、海堂――――」
「大石先輩」
僕の言葉を遮って、海堂は僕の腕を掴んで大石に声を掛ける。
「不二先輩、熱あるみたいなんで保健室に連れて行きます」
「え? あ、うん…」
海堂の有無を言わせぬ力強さに、大石は二つ返事で承諾した。
「ちょ、ちょっと待って海堂…」
僕は大丈夫…そう言おうとした瞬間だった。
グラッと視界が揺れる。
そして、世界が…だんだん、白くなっていったんだ。
遠くで、大石の僕を呼ぶ声が聞こえた。
ふと目が覚めると、見慣れない天井。
少しだけ、考えて、思い出す。
そうだ…僕、保健室に連れていかれたんだっけ?
あ、海堂…海堂はどこだろう?
僕はぐらぐらする頭を何とか持ち上げて、ベッドと外を遮断するカーテンを開けた。
そこには、窓から見える外…いや、コートを見つめる海堂の姿。
…もしかして、僕が起きるのを待ってた?
あんなに、部活を大切にしてる海堂なのに。
「海堂」
呼ぶと、海堂はすぐに振り向いた。
「不二先輩! 大丈夫っスか?!」
足早にベッドサイドに駆け寄ってきて、海堂は僕の額に手を伸ばす。
あ…。成長した大きな手が、僕の額に触れた。
「…やっぱり熱、あるみたいっスね」
寝てて下さい、と無理矢理寝かしつけられて、僕はまた横になった。