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【庭球・BL・海不二】黄昏に映える人

第7章 気に入らない。


「海堂。不二の具合は?」
「…乾。それって僕に直接聞くことじゃない?」

 どうして僕のことを海堂に聞くのかな。

「熱、上がってきたみたいで…」

 海堂も海堂だよ…なんで君が答えるのさ。

「不二。お前もう帰れ。カバン、持ってきてやったぞ」
「え…」
「まずは風邪を治すことが先決だ。さっさと帰って早く休め」

 …確かに、正論だけど。
 何だか君に言われると腹が立つのは何故だろうね?

「海堂。手塚から伝言だ。不二を家まで送ってってやれってさ。だから、着がえて荷物持っておいで」

「…っス」
「ちょ、ちょっと待ってよ。大丈夫だよ、一人で帰れる…」

 海堂に迷惑かけちゃうよ。
 海堂は部活第一だし、大体、家の方向が全然違う…。

「じゃ、ちょっと待ってて下さい」
「あ、海堂…」

 僕の制止の言葉も聞かずに、海堂は保健室を出て行ってしまった。
 全く…君のせいだよ、乾。
 チラ、と乾を見てみれば、何だか物凄く楽しそうな顔をしている。

「…何なのさ、一体」

 不機嫌そうに言ってみれば、乾はクスクスと笑った。

「不二。海堂と俺が話してるとき、ずっと俺たちを見てただろ?」
「…そんなことないよ」

 図星だったけど、努めて普通に、平常通りに振舞う。
 けれど。

「開眼してたからな」
「え…」
「海堂がそんなに気になるのか?」

 他のヤツと海堂が話してるときは、いつも不機嫌そうにそっちを見てる、と指摘された。
 うそ…そんなに見てた?
 僕が、海堂のことを??

「それに…海堂と話してるとき、よく笑ってるよ、お前は」

 …うそ…自覚、ないかも…。

「意外とわかりやすくて驚いたよ」
「…それ、誉めてるの、貶してるの?」
「さぁ? 貶してるわけじゃないことは確かだな」
「あ、そ。じゃぁ…とりあえず、誰にも言っちゃダメだよ?」
「…何のことかな」

 とぼけちゃって…。
 すでにその小脇に抱えてるノートに、このことは書かれてるはず。

「僕だって、まだ自覚できてないんだからね」
「はいはい。わかってるよ」

 呆れた物言いの乾に少し腹が立ったけど、まぁいいか。
 とりあえず…この変な気持ちを、整理しなくちゃ。
 …裕太みたいに…弟みたいに、思ってるだけだよ、きっと。

 …きっと。

 

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