第6章 おかえりなさいませ、お嬢様
そして迎えたイベント当日。
イベントまでに来ていただいたお客さん方には、イベントの開催を伝えてある。そのことが女子のネットワークでどれだけ広がっているかに、売り上げ2倍、つまりはこの店の存続がかかっている。
開店前。
様子見で、店の裏口からそっと店の前を覗いてみた。そして、わたしは息を呑んだ。
まだ、開店30分前だというのに、この誰も寄り付かなそうな路地裏から溢れかえるほどの列ができていた。
『すごい………』
そう、声が漏れてしまうくらいに。
そして、そのことを店のみんなに伝える。
おそ「まじで!?ふははは!大儲けだ!」
大口を開けてがははは、と笑う。
それを見たチョロ松さんが下品だ、と言い捨てる。
チョロ「こうなったら、期待を裏切らないように頑張らないと」
『そうですね』
平然を装うも、緊張は否めない。
一「肩に力入ってる」
そう聞こえたのと同時に、ぽん、と後ろから肩に手が置かれる。その手が一松さんのものだと分かるのに、さして時間はかからなかった。
十四「大丈夫だよ!伊織ちゃんなら、絶対に大丈夫!」
十四松さんが前からわたしの手を握ってくれた。
肩と手に触れる優しい温もりは、わたしの緊張しきった心を解きほぐすのに十分だった。