第11章 だいじょーぶ!【十四松】
わたしに気づいた彼女が耳からケータイを離し、まるで何事も無かったかのように、さも当たり前のように、わたしに手を振った。
彼女が口パクで何かを訴えてきた。
わたしは必死に目を凝らして見る。
『み……て、る………。っ!』
ああ、もうダメだ。
カーテンを閉め、その場にうずくまる。
すると、また電話がなった。
出ない方がいい。
分かってる。
でも………
わたしは、また恐る恐る受話器を手に取った。
〈ねえ、どうして目をそらしたの?〉
『………っ』
〈わたしは、あなたの知らないことなんてない。知ってるよ?あなたが女だってことも〉
『なっ………!』
〈今日分かったの。ポストに手紙を取りに行っているところを"偶然"見かけた時、見た目が完全に女だったから。それまではてっきり、女姿のあなたはリッカくんの彼女だとおもってたのだけれど〉
偶然?
なにが偶然?
『ずっと見張ってるくせに、なにが偶然!?ふざけないで!』
〈だって、あなたが悪いのよ?わたしに何も教えてくれなかったあなたが〉