第10章 悪が勝ってもいいじゃん【一松】
『や、やめて!』
わたしは彼をどん、と勢いよく押してしまった。
一「いた……」
一松さんが盛大に尻もちをつく。
『あ……ご、ごめんなさ───』
一「君は謝らないで。俺が悪いんだから」
わたしの謝罪の言葉を遮られる。
一「君は?君も、キスは初めて?」
『わたし……は………』
初めて……じゃない。
一松さんにそっくりで……でも、全くの別人と。
一「初めてじゃないの?だれ、それ。俺の知ってる人?」
正直には答えられない。
一「その感じだと………もしかして、兄弟の中のだれか?」
『っ………!』
違う。
そう言いたいけど、違わない。
あってる。