第10章 悪が勝ってもいいじゃん【一松】
足元に何か温かなものが触れた。
暗くてよく見えないから、しゃがみこむ。
『わー、猫ちゃんだ……。かーわいー』
その猫を抱き上げる。
「おーい、タマゴロー。どこー?」
暗くてよく見えないけど、この声は………
『一松さん?』
一松「あ、伊織ちゃん。いたんだ?」
『はい。今から帰ろうとしてたんですけど……』
腕の中にいる、猫ちゃんに視線を移す。
『この子が擦り寄ってきたので』
一松「あ、タマゴロー。ここにいたの?」
タマゴローか………。
ネーミングセンス皆無。
『男の子なんですか?』
一松「…………さあ?」
お気の毒に………。