第9章 ずっと想ってた【チョロ松】
【チョロ松side】
『いえ………特に何もありません。ただ、チョロ松さんらしき人影だったので……』
え………?
彼女は遠くから見ても、僕を僕だと分かったってこと?
こんな人混みの中?
しかも、他の兄弟の誰でもなく、僕だって分かったの?
なんか………嬉しい。
でも……、
だからこそ、彼女にこの姿を見せたくなかった。
チョロ「ああ、そう。悪いけど、急ぎなんだ。今日、遅れないようにね」
ああ、速く彼女の前から消え去りたい。
こんな僕なんて見て欲しくなかった。
一体、僕は何のために完璧な青年を彼女の前で演じてきたんだよ……。
これじゃあ、台無しじゃないか。