第8章 あげるよ【カラ松】
わたしは夢を見た。
熱があるからなのかな。
もう二度と見たくなかった、あの人が出てくる夢。
悪夢。
優しい顔したアイツがわたしを抱きしめる。
〈伊織………好きだよ……〉
うん。わたしも。
わたしも、──くんのことが好き。
わたしが彼の背中に腕を回そうとした途端に世界ががらりと変わった。さっきまでは光が溢れる優しい世界だったのに、真っ暗でただただ暗い世界に。
ねえ、どこ?
──くん!どこ!?
〈ああ、アイツ?アイツはただの遊びだよ〉
──くんの声が聞こえる……。
わたしは声のした方に近づいていく。
あ!
──くん、いた!!
走って近寄る。
でも、近づけば近づくほどにだんだんとはっきり見えてきた。
隣にいるの、誰……?
わたしと──くんとの間に亀裂が入っていく。
〈俺が好きなのはお前だけだよ。アイツは色々と金払ってくれるし。ちょっと優しくしただけでさ。なに自惚れてんの、って感じ〉
隣にいる女がキャハハと笑う。
うるさい。
うるさいうるさいうるさいうるさい!
アイツハタダノアソビダヨ────……。