第5章 平行する想い
「四宮さんは莉緒ちゃんに謝罪したいっていう意志があるって思っていいんですよね?」
「ええ。でも、莉緒に話し掛けようとすると岩泉が話に入ってきて、莉緒と話せなくて。」
まあ、今日のあの四宮さんの声の掛け方からして、謝ろうと思ってる人の態度ではないし、事情を知ってる人から見れば、また莉緒ちゃんに手を出すのではないかと思わせる雰囲気だった。あそこに岩ちゃんがいなければ、きっと俺が割って入ってたし。
「あんな威圧的な態度じゃ、謝ろうとしてるなんて思えないですよ。」
「何よ、私が悪いって言うの!?」
こんな調子で四宮さんは本当に謝る意志があるのか少し不安になってきた。謝るっていう口実でまた莉緒ちゃんに手を出す可能性だってゼロではない。莉緒ちゃんは四宮さんに対して恐怖心もあるだろうし、四宮さんがこんな態度じゃ話にならないと思う。
「莉緒ちゃんに本当に謝りたいと思う気持ちがあるなら、まずその態度を改めて下さい。」
「年下のくせに生意気。」
「年下に世話をやかせてるのはどこの誰ですか?」
「莉緒の事好きだからって私との仲を取り繕って好感度上げようとしてるの見え見えなんだけど!」
四宮さんにそう言われ、驚いた。
俺が莉緒ちゃんを好き?
まあ、チームメイトとしては好きだけど、女の子として特別な感情は一切ないし、どちらかというと、元々は嫌いな部類だった訳で。顔は確かに可愛いと思うけど、顔も性格も俺の好みではない。そもそも、俺って女の子に対して好きっていう感情を抱いたことがない。今まで付き合ってきた子は、皆岩ちゃんのファンで、好きだった子でもないし、付き合ったからといって好きになった訳じゃないし。
そんな事を考えていると、四宮さんは何やら難しそうな表情を浮かべていた。
「あー、わかった。態度改める。」
何が分かったのか俺にはそれが分からなかったけど、本人が態度を改めると言ったんだから、それでよしとしよう。
「じゃあ、俺は二人で話せる機会を作るので、後は上手くやってくださいよ。」
連絡先を交換し、その場で別れた。