第5章 平行する想い
「莉緒は入部した時からずば抜けてセンスが良くて、先輩達から嫌われてたわ。二、三年を差し置いてレギュラー勝ち取って、レギュラーを取れなかった先輩達から随分嫉妬されてたし莉緒自身生意気だったし、嫌われて当然な子だった。」
「でも、四宮さんはそうは思ってなかったんでしょう?」
「は?私だって、あんな子好きじゃなかったわよ!」
「でも、仲が良かったと聞きましたけど。」
「あの子以上にチームに得点を稼げる子がいなかった、それだけの事よ。別に仲良くした覚えもないし、ずっと鬱陶しくてたまらなかった!
アンタには分からないでしょう!後輩に、しかも違うポジションの奴に、ポジションを奪われた私の気持ちが!」
中学三年の頃、俺も後輩に、飛雄に ポジションを一度奪われた。だから、四宮さんの気持ちは俺が多分一番よく分かる。飛雄の才能に嫉妬し、自分の無力さを呪った。大好きで楽しくてたまらなかったバレーが、苦しくて、鎖みたいに体に纏わり付くついて、周りが見えなくなった。バレーをやればやるだけ泥濘にハマっていって、もっともっと苦しくなって、そこからすくい上げてくれたのが岩ちゃんだった。岩ちゃんがいなかったら、俺はきっと今バレーを続けてない。きっと四宮さんは、その泥濘にハマってまだ抜け出せていないでいる。
四宮さんは、その後莉緒ちゃんに対してどんなイジメをしてきたか、泣き叫ぶように話をした。無視をしたり、暴言を吐いたり、私物をゴミ箱に捨てたり、部活中莉緒ちゃんにボールをまわさなかったり、時には暴力、階段から突き落としたり、真冬に倉庫に閉じ込めたり、聞いていると吐き気がするような酷い内容もあった。
莉緒ちゃんに行ったイジメについて、自分を擁護するようにではなく、誰が聞いても、自分自身が責められるような言い方で話す四宮さん。それが、イジメられていたのに四宮さんを庇うようにしてしか話さない莉緒ちゃんと重なった。