第5章 平行する想い
その後、莉緒ちゃんは四宮さんとの事を皆に話した。
前の学校で良くしてくれていた先輩で、彼女の怪我をキッカケに、ポジションを奪ってしまい、彼女を傷付けてしまった。それをキッカケに仲が悪くなってしまい、喧嘩の途中に転校してしまった為、まだ仲直り出来ていないと。莉緒ちゃんはイジメられた事については話さなかったけど、恐らく鈍感な金田一以外は皆気付いてる。莉緒ちゃん自身も、気付かれていると分かっていたと思う。
それを聞いて、ポジションを奪われたからって、と怒りを露にする奴もいたが、
「美鈴さんの気持ちを考えられなかった私のせいだから。
だから、彼女を悪く言わないで。」
そう言った莉緒ちゃんに、部員達は黙った。
その言葉を聞いて岩ちゃんは凄く不機嫌だったが、それを否定はしなかった。それを否定してしまえば、イジメられてい事までを話さなければいけなくなる。
女の子って、普通こういう時は泣いて、同情をひいたりするもんだよね。馬鹿な男達に、この子は俺が守ってやんなきゃ、みたく思わせるもんでしょ?なのに、莉緒ちゃんは泣きもしなければ、四宮さんを責める部員達にあんな事言っちゃうし。雑誌のモデルや、テレビにでてくるアイドルなんかよりも可愛い莉緒ちゃんが涙の一つでも見せれば絶対皆イチコロなのに、莉緒ちゃんはそれをしない。そんな不器用で強がりな莉緒ちゃんだから、岩ちゃんも守ってあげたくなるんだろうな。
…そんな莉緒ちゃんだから、俺も守ってあげたいって思った。