第5章 平行する想い
練習試合が始まっても相変わらず岩ちゃんは不機嫌で、そのせいか、いつもはしないような小さなミスが続いた。岩ちゃんはメンタル面に関しては結構強い方だと思っていたけど、莉緒ちゃんの事が絡むと、結構左右される。その不穏な雰囲気を皆も感じていた。
午前中の練習が終わり、昼食の時間。
相変わらず、莉緒ちゃんは元気がなく、岩ちゃんはずっとイライラしてる。それを皆感じ取ってるけど、口に出来る雰囲気ではなく、皆二人に触れない。
「橋口さんと岩泉さん何かあったんですか?」
一人空気の読めない金田一が、どう考えても話し掛けられる雰囲気じゃない二人に声を掛けた。何でもないと言う二人に、でも、と食いついた時、
「莉緒も岩泉も可愛い後輩に心配掛けちゃダメでしょ?」
四宮さんがそう声を掛けてきた。すると岩ちゃんは莉緒ちゃんを庇うように莉緒ちゃんの前に立ち、四宮さんを睨みつけた。四宮さんは金田一の隣に立っているため、必然的に金田一も岩ちゃんに睨まれてるような形になって、金田一が不憫だった。
「何の用だ。」
「岩泉に用はないんだけど。私は久しぶりに莉緒とゆっくり話したいだけ。」
「お前と話す事なんか何もねーよ!」
「岩泉には聞いてない。」
あんなに怒った岩ちゃんに淡々と話し掛ける四宮さん。普通女子ならビビるところだと思うんだけど。どちらかというと、無関係の金田一の方がビビってる。
「ねえ、莉緒。話すこと、あるよね?」
そう言った彼女の声は冷たくて、どんな表情で言ったのかは後ろ姿しか見えないため、見る事は出来なかったが、恐らくその声と同様冷たい表情だったんだと思う。その声に莉緒ちゃんは言われてちゃんの後ろで震えていた。
「だから、ねーつってんだろうが!」
「…一君、大丈夫だから。私も、美鈴さんと話たいことあります。」
莉緒ちゃんの声は震えてた。