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【HQ】Egoist

第5章 平行する想い


 イジメられていたと打ち明けてくれた莉緒ちゃん。それを聞いて、やっぱりと思った。なんて声を掛けていいか分からなかった。何を言っても安っぽく、上辺だけの言葉にしか聞こえないような気がして。
 莉緒ちゃんは言葉に詰まりながらも、ゆっくり、昔あった事を話してくれた。最初は四宮さんと仲が良かった事、四宮さんの怪我をキッカケにポジションを奪ってしまった事、春高代表決定戦の決勝での事、イジメを受けた事、岩ちゃんが助けに来てくれた事。それを聞いて、莉緒ちゃんが岩ちゃんに対し、絶対的な信頼を寄せる理由が分かり、納得した。
 話をする中で、不思議に思ったのが、イジメの内容については話してはくれなかったが、確かにイジメの主犯であったであろう四宮さんを悪く言おうとしない。どちらかというと、イジメの主犯である彼女を庇い、自分を責めるようにしか話さない。それは多分きっと、心の何処かで彼女の事を信じたい気持ちがあるからだと思う。


「…こんな話してごめんね。及川に話したらなんかスッキリした。もう大丈夫。」


 そう言って莉緒ちゃんは笑ってみせるけど、いつもの笑顔じゃない。


「莉緒ちゃん、昔は確かに一人だったのかもしれないけど、今の莉緒ちゃんには俺も、岩ちゃんも、皆ついてるから。皆、莉緒ちゃんの仲間なんだからね。」
「うん、ありがとう。」


 莉緒ちゃんと一緒に体育館に戻ると、岩ちゃんの機嫌が凄く悪かった。岩ちゃんに後を任せ、勝手に体育館を出て行ったから怒ってるのかと思ったけど、岩ちゃんの怒りの矛先は俺じゃなくて、四宮さんに向けられていた。




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