第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
「莉緒ちゃん、どうしたの?」
及川の声がした。大学生が来たから練習試合始まるだろうに、コイツは何してんだ。そう思ったけど、私のあの不自然な態度、気にするなっていう方が無理だよね。
「…早く練習行ってよ。」
まだ、声が震える。
「莉緒ちゃんだって、マネージャーなんだからやる事あるでしょ?」
その言葉に反論する事が出来なかった。
「四宮さんの事苦手?」
「…そういうのじゃない。」
「前部活で何かあったの?」
その質問に何て答えたらいいか分からなかった。逃げ出してきたのに、何も無いって言うのはおかしいし、何も無いと言って、それをそうですかと及川が納得してくれるとも思わない。なら、いっそ、本当の事を言ってしまう?でも、昔イジメられてましたなんて、恥ずかしいし、及川には、青葉城西の皆には知られたくない。
きっと皆優しいから、私の事を傷ものみたいに扱う。私は同情して欲しいわけでも、美鈴さんを非難して欲しい訳でもない。ただ、美鈴さんの前に立つ勇気がないだけ。
でも、及川を納得させられる言い訳なんて、思い付かないし、きっと、及川は気付いたと思う。だから、私は本当の事を言う事にした。
「…私、イジメられてたの。」
そう伝えた時、及川はいったいどんな表情で私を見ていたんだろう。怖くて及川の顔を見る事が出来なかった。