第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
チームの組み合わせを変え、何度も試合をした。
矢巾、金田一と同じチームになった時、及川の強烈なスパイクに金田一のレシーブが乱れた。ボールを返したというよりは、体に当たって弾き飛ばされたと言った方がいい。私は金田一が上げてくれたボールを追いかけた。ボールはコートの外。それになんとかくらいつき、コートの外からの超ロングセットアップ。それに合わせて矢巾が走るが、私の上げたトスはそのままコートへ転がった。
それがあの日の試合と重なった。
皆の話し声が遠くに聞こえ、それが雑音のようにしか聞こえなくなって、体育館に皆といた筈なのに、真っ暗な部屋に一人閉じ込められたような感覚がして、体が動かなくなった。
「莉緒!」
一君に呼ばれ、その暗闇から開放された。心配そうに表情で私を無理見つめる一君に心配をかけないように、大丈夫と言って笑ってみせた。それに一君が一瞬、悲しそうな顔をしたように見えた気がした。
一君は私を抱きしめた。
「大丈夫、傍にいるから。無理して笑おうとすんな。」
その言葉に安心して、私は一君の胸の中で泣き崩れた。