第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
一人体育館を出た及川君を追って、私も体育館を出た。及川君は私に気付き声を掛けてきた。
「ねえ、一君がそんなに女の子にチヤホヤされるのがイヤなの?
一君に対するライバル意識?
無意識でしてる訳じゃないでしょ?」
一君は、カッコよくて、勉強もできて、バレーも上手くて、優しい。そんな人がモテない訳ない。色んな人に告白されたりするだろうし、彼女だっているはずなのに、一君には全くそれがない。それがずっと不思議でたまらなかったけど、今日練習を見て、よく分かった。
彼のせいだ。
そして、及川君は、一君と一番の親友であり、チームメイトでありながら、どうしてこんなにも一君に対して劣等感を抱いているの?友達なのに。その疑問を口にすると、及川君の目の色が変わった。
「莉緒ちゃんに俺と岩ちゃんの何が分かる?」
ああ、この人は、不安なんだ。一君より勝っていると他人から評価されないと不安でたまらないんだ。一君は及川君の事を大切に思っているのに。
「可哀想な人。」
まだ話したい事は沢山あったが、壁ドンされた私を見た一君の登場により、それ以上及川君と話す事は出来なかった。