第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
結局私は学校を転校する事になった。元々、お父さんの転勤も決まっていたらしく、転勤の時期を少し早めてもらうことになった。
あの日、お父さんとお母さんが先生達と何を話したか、怖くて私は聞けなかった。
そして、美鈴さんに会うことなく、そのまま私は福岡へ転校した。
福岡に転校し、私はまたバレー部に入った。あの日の試合が脳裏にちらつき、トスを上げるのが怖かった。トスを上げてもらえないんじゃないか、不安だった。でも、バレーを辞めたくはなかった。だから、私は顧問の先生な経験はないがリベロをやりたいと言って、リベロとして試合に出れるよう練習に打ち込んだ。ボールを自分が最初に拾えば、それを誰かが繋いでくれる。そんな思いもあった。
部活が盛んな学校では無かったため、部活時間だけじゃなかなか技術が身につかず、お母さんにお願いして、サークルにも入れてもらった。社会人の強烈なスパイクやサーブに手足は痣だらけになった。でも、徐々にボールを上げられるようになり、レシーブの楽しさを覚え、またバレーが楽しくなった。
けど、ふとした時にあの日の事を思い出し、どうしようもない時もあった。そんな時は一君に電話をして、一君に話を聞いてもらった。泣きながら話す私を優しく励まし、時には厳しく声を掛けてくれた。ずっと前から私にとって特別だった一君は、益々特別な存在になった。私が男の子だったら一君と同じコートに立つ事が出来たのに、何度も何度もそう思った。そして、一君が小学生の時から一緒にバレーをしてる及川君の事が羨ましくて仕方なかった。転校してから会ってもいない及川君に嫉妬している自分がいた。