第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
どうして私達の関係はこんなにも壊れてしまったんだろう。私がポジションを奪ったから、私が無神経だったから、いつも支え、守ってくれていた美鈴さんを私が壊してしまった。ただ、私はバレーが好きで、大好きな美鈴さんと一緒にバレーがしたいだけだったのに。なのに、私は一人で突っ走って、美鈴さんを、チームを置き去りにしてしまっていた。私は、皆でバレーがしたいと言っておきながら、周りを見ていなかった。皆に拒絶されるまでそれに気付けなかった。気付いた時にはもう手遅れで、それなのに私は自分の努力が足りないからとバレーに打ち込んだ。そんな無神経な私にどれだけ彼女達は不愉快な思いをしただろう。でも、それでも、私は、
「一君、私、バレーが好き。こんなになってもバレーを続けたいなんておかしいよね。ダメだよね。」
そう言って泣く私の頭を一君は優しく撫でてくれた。
「莉緒は強いな。」
違う、強いんじゃない、私にはバレーしかないから、バレーをやめたら、私には何も残らない。
バレーは三度のボレーで相手コートにボールを返す競技。バスケやサッカーのドリブルのように同じ選手がずっとボールを持っている事を許されない。バレーは一人ではゲームとして成り立たない、仲間が必要なスポーツ。私は、バレーを通して、ずっと探していた。ボールを、心を繋ぐことの出来る相手、チームを。それを探すことの出来るのがバレーだから。だから私はバレーを好きになった。
「絶対にバレー諦めんなよ。莉緒が思いっきりバレー出来るチームはある。お前を必要とし、お前が必要とするチームが絶対ある。
もしまた辛い事があった時は絶対俺に言え。どんなに遠くたって、駆けつける。だから、今回みたいに返事寄越さないのも、黙っとくのも無しな。」
「…うん。」
「一緒にコートに立つ事はできねーけど、俺は何があったって、莉緒の味方だから。」
一君のその言葉に私はまた泣いた。