第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
季節は変わり、十二月。
その日は朝から雪が降っていて、とても寒い日だった。授業が終わる頃には随分雪が積もっていた。夕方になっても雪は止まず、降り続けていた。
体育館に向かうと、授業が少し早く終わった事もあって、珍しく私が一番乗りだった。ネットを張ろうと倉庫に入った。カーボンを持とうと、カーボンに手を掛けた時、倉庫の扉が閉まり、鍵がかかる音がした。慌てて扉の方に向かい、扉を叩くけど、反応はなく、開けてと叫ぶも、扉が開くことは無かった。もう少ししたら皆部活に来るだろうし、ネットが張られてない訳だから、誰かしら倉庫に来るだろうと思い、私はその時を待ったが、いくら待っても誰も来ない。部活が休みになるなんて連絡も無かったのにおかしい。もしかして、私にだけ連絡が来なかったんじゃないか。…充分に有り得る。そう思い、扉を叩き、声を出すが、何も反応はない。部活が無ければ、誰もこの体育館には来ないし、いくら声を張り上げたって、無意味。
どれくらいここに閉じ込められて経つのか、雪の影響もあって、室内とは言え、凄く寒い。指先と足先の感覚がどんどんなくなってくるのが分かった。携帯は部室に置いてきたし、助けを求める事も出来ない。お母さんが心配してるんじゃないか。お母さん一人外に出て、この雪の中探してるんじゃないか。そう考えると自分の事よりお母さんの事が心配でたまらなかった。
それから更に時間は経ち、体中の感覚が麻痺してきた。
寒い、怖い。
いつ助けが来るか分からない状況に私は怯えていた。
そんな時、外から声が聞こえ、倉庫の扉がが開いた。
「莉緒!」
扉を開けたのは、一君だった。
「…なんで、一君が、」
寒さのせいで私の声は酷く震えていた。そんな私の元に一君は駆け寄り、強く抱きしめてくれた。
「もう大丈夫だ。」
そう言ってくれた一君の胸で私は泣いた。