第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
春高代表決定戦、順調に勝ち進み、決勝まで辿りついた。セットカウントは2-2、向こうのマッチポイント。ここで点を取ればデュース。まだ、こっちにだってチャンスはある。
向こうのサーブをリベロが拾いトスを上げる。美鈴さんのスパイク、ブロックを抜けるが、向こうのリベロに拾われ、Aクイック。そしてまたボールを拾い、ラリーが続く。もう、足が重くて、気合いだけで走り続けている。相手チームの強烈なスパイクに、こっちのレシーブが乱れ、ボールはコートの外へ。私はボールを追いかけた。
いつ転校になるか分からない。一試合でも多く、美鈴さんと、このチームとバレーがしたい。
ボールに追いつき、コートの外からの超ロングセットアップ。それに合わせて美鈴さんがスパイクに入る。タイミングはドンピシャ。いける、美鈴さんなら決めてくる。
そう、思ったのに、私の上げたトスはそのまま、地面に着いた。
31-29
マッチポイントを向こうが取り、セットカウント3-2。私達は負けた。
タイミングぴったりだと思ったトスに、美鈴さんはボールを打ってくれなかった。
そして、その日から私達の関係は崩れ始めた。いや、もう、その前から崩れていたのかもしれない。それに私は気付けなかった。