第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
春高県一次予選が始まり、一回戦、二回戦と順調に勝ち進み、三回戦、試合中に美鈴さんが相手チームのスパイクをブロックした時に、美鈴さんが指を負傷した。指が不自然に曲がっていた。医務室に行く為、メンバーチェンジとなり、一年生のセッターが代わりに入ったが、上手くタイミングが合わず、得点に繋がらない。サーブやスパイクも集中して狙われ、第二セットを落とした。
第三セットが始まっても、美鈴さんは戻ってこず、このままではまずい、そう思って、体が自然と動いた。ウイングスパイカーだからトスを上げられない訳じゃない。先輩達と沢山練習した、美鈴さんのプレーを一番間近で見ていたのは私。私なら皆の望むトスを上げられる。私がトスを上げだしてから、ゲームの流れが一気に変わった。第三セットを取り、勝利する事が出来た。
試合が終わり、監督から話を聞くと、美鈴さんの指は折れていたらしく、そのまま近くの病院へ行ったらしい。私は試合が終わり、そのまま病院へと向かった。
待合室で待っていると、診察室から指を固定された美鈴さんが出てきた。表情は暗く、いつもの美鈴さんの面影はなかった。
「美鈴さん!勝ちました!春高県代表決定戦、出場決まりました!」
そう言うと、美鈴さんの表情がいつもの優しい表情に戻り、よくやったと、何度も何度も褒めてくれた。
美鈴さんの指は全治二ヶ月。二ヶ月なら、春高代表決定戦に間に合う。美鈴さんが戻って来た時、最高のプレーが出来るよう、一段と練習に打ち込んだ。